イラストレーターamycco.のブログです。

西加奈子 「しずく」。

この間読んだ西加奈子さんの「きいろいゾウ」がちょっと長かったので、短編集の「しずく」を読んでみました。

ちょっと間延びした感じを受けてしまう長編よりも、短い中に涙や笑いがぎゅっとつまった短編のほうが私は好きかもしれません。

***
表題作の「しずく」は、一組のカップルと二匹の猫の日々を描いた話。
遠い国の昔話でも語るような語り口で穏やかにゆるやかに書かれていますが、せつないです。せつないなぁ、普通の毎日の中でちょっとずつ、ちょっとずつ、何かが変わっていくのは。
猫たちの目線で見た人間の世界は滑稽でもあるのに、こんなにせつなく思うのは、登場人物が「イラストレーターのエミコさん」だからなのかしら。

「影」。
「人から自分という人間を決め付けられること」を嫌うのに、「皆から思われているとおりの私」をいつの間にか演じてしまっている・・・心当たりのある私はうんうんと共感しながら読みました。
皆が思っている「私」以外にも私はいっぱいいるし、どれも本当の自分なのに、自分から窮屈なその型にはまることを選んでしまうこと、あるなぁ。
着慣れた服をついいつも着てしまうようにそうしてしまう。私は小さいころからずっとそうだったなぁ。

「シャワーキャップ」。

「母の『大丈夫』を聞くと、結局私は、いつだって大丈夫なのだ。」
よくわかる。そうそう、お母さんに「なんとかなるってー」と言われると、根拠なんてなくても本当に何とかなる気がするのです。
母が東京の私の家に遊びに来てくれたときのことを思い出しました。今年の2月。
母と二人でごはんを食べたり、たわいもない話をしたりするのが私はとても好きで、母が東京に来てくれるとそれができるのでうれしかったのです。
娘にとって、母親って、ほんとうに特別な存在です。
なんてことのない話だけれど、なんてことないからこそ、じんわり、感動しました。

***

この短編集の主人公たちは一見だーれも私とは似ていないのに、「あー、わかりますー」って、紙面を突き抜けて伝えにいきたいぐらい共感できるポイントが随所にありました。

そのことを思うと、今自分が悩んだり迷ったりしていることも、きっとどこかで誰かが同じように迷ったり悩んだりしているようなことなんだろうなー、とちょっと心がフワッとなりました。

西加奈子さん自身が描いた、表紙の絵も好きです。色が絶妙だなぁ◎

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