今スタッフをやっている、ゴールデンウィークの建仁寺のイベントは、お寺らしく、朝は写経イベントから始まります。
今日は朝からカフェのお客さんがたくさん来てくださったので、私は写経に参加できなかったのですが、
おしょうさんが説明されていた、写経のアドバイスを部屋越しに聞くことができました。
「お経には、お経の意味というのもあるんですが、写経では、心を無にして一生懸命写していくということが大事です。」
とのこと!
写経って、聞いたことはあるけど、いったいどういう目的で行われるの?と思っていた私には目からウロコ!
心を無にして一生懸命に写していくって、私がいつもいつもやっているクロッキーと全く同じ内容ではないですか!
そこで、あるお坊さん(匿名希望、宗派は秘密)に質問してみました。
Q1 写経と写生はどのように違いますか?
A ものが違うなぁ。
Q しかし、心を無にして一生懸命に写していくという点においては全く同じものだと思えてならないのですが。
A ほな、おなじやな。
Q2 私は心の中のほとんどが煩悩なので、それをなくしたら死んでしまうのかと不安です。写経で煩悩を取り去っても平気でしょうか?
A ほとんど煩悩なんやったら、とらへんほうがいいなぁ。
Q 人には108つの煩悩があるといわれていますが、私は60億以上の煩悩を抱えているかもしれないんです・・・
A そうなん、ビフィズス菌並にいっぱいあるんやなぁ。
Q 私は引越しをしたくても、敷金礼金がかかると思うとなかなか踏み切れません。お金のことを気にしてしまうのは煩悩ですよね?
A それは煩悩とちゃうんとちゃう?お金は単なる社会のシステムにすぎひん。
とのことでした。
質問に答えてくださったお坊さん(匿名)、ありがとうございました!
***
そのあと、カフェの前を、驚くほど派手な人が通りかかり、誰か知らないけど、ひとまずお水でもお持ちしようと休憩室に行くと、その人は今日のトークショーのゲスト、美術家の市川孝典さんでした。
軽く自己紹介をしたところ、それがなぜか面白かったらしく、めちゃくちゃ話が盛り上がりました。
市川さんのマネージャーさん(匿名希望)が、APPLE社の日本人デザイナーさんとお知り合いらしく、
「私もAPPLE社でコンピューターを買おうかと思っているのですが、、、」と相談すると、いろんなことを教えてくださいました。
そのあと、市川さんは、いしいしんじさんという坊主のオッチャンとトークショーに行ってしまわれました。
その頃、カフェはたくさんの方に来ていただいていて忙しく、前半はほとんど聞けなかったのですが、
後半は聞くことができました。
最後に質問コーナーがあったので、坊主のいしいさんに思い切ってまた例の質問をぶつけてみました。
私「あのー、いしいさんは、お坊さんということなので、質問させていただきたいのですが・・・」
い「坊さんではないですよ」
え・・・!
お坊さんに質問するという大事な前提が崩れてしまう・・・、と動揺する私。
でもなぜかこんな失言をしてしまった私をほのぼのと暖かいまなざしで見守ってくれる観客の皆さん・・・。涙
私「お坊さんだと思って質問を書いてきてしまったので、続けさせてください」
私「今朝の写経の時間に、おしょうさんから、写経というのは心を無にして一生懸命写していくことが大事です、と教わりました。
私は写生が好きなのですが、対象がお経か風景かの違いはあれど、心を無にして写すという点においては、写経と写生は同じだと私は考えます。
写経と写生の、共通点・相違点を教えてください」
すると、いしいしんじさんは答えてくれました。
「たとえばお茶の稽古。これは先生がやっているのをみて、その作法を写すだけ。”自分”が入り込む余地はほとんどありません。
写生は、風景と絵の間に自分が入るわけです。写経も同じ、お経と、紙の間に自分が入る。
その”間に入る自分”というのはなるべく透明であったほうがいい。だって、自分がにごっていたら、出てくる結果がねじまがってしまうやろ。」
なるほど、和尚さんが言っていた、「心を無にして・・・」とはそういうことだったのですね。
煩悩をなくして・・・という難しいことではない。対象と、真っ白な紙の間に、自分がそっと入るという、それだけのことなのですね。
透明度の高いガラスごしに眺める大パノラマのように・・・。
“自分”が間に入りつつも、それは景色の美しさを損なう色や模様や汚れのついたものであってはならない。
究極にシンプルであること、それが写経であり、写生なのではないかと、私、勝手に思いました。
私が旅に出る理由と同じ。何者でもないただの透明な私として、街並みを眺めたり、人と話したりしたくて遠いところへ旅に出るのです。日常の私は、良くも悪くも色がついているから。
お坊さん(匿名)といしいさんの素敵な言葉のおかげで、なぞが少し解けた気がします。ありがとうございます。
↑いしいさんが、「俺ほんまはしっぽあるねん」と描き足してくれました。
***
そのあとは市川さんや、いしいさん、そのお友達の皆さんと飲みに行きました。
みんなすっごくいい人ばかりで、私がノリノリで自由に話してもだれも白い目で見ません!
白い目どころか、すっごく楽しそうに私のしょうもない話を聞いてくださるみなさん・・・。
こんな居心地のよい大人数の飲み会がこの世にあるなんて・・・と、モノクロだった私の飲み会人生にパァッとステンドグラスのようにきれいな色がついた気持ちがしました。
私は声が小さく、大人数での飲み会ではぜんぜんしゃべれないのですが、皆さんと仲良くなりたかったので声が小さいなりにがんばって、皆さんとは筆談で交流を深めました。
盛り上がりすぎて、買ったばっかりのブルーのボールペンのインクがなくなってしまったと言ったらどれだけ盛り上がったかがご想像いただけるでしょうか。
そして、いしいしんじさんは、実は作家さんだということも、皆さんから教えていただきました・・・。
現代の宮沢賢治とも言われているようで、宮沢賢治もいしいしんじさん(のキャラ)も大好きなのでさっそくチェックしなくては!
私は週2~3冊は本を読むので、いしいしんじさんの本にも今までに出会っていて不思議はないのですが(有名な方だそうなので、うちの近所の本屋さんにだけないということもなさそうです)、なぜ知らなかったのでしょうか。
作者名「あ」から始まる本棚でもいしいさんなら偶然手に取る可能性は高いはずなのに・・・。
あまりの縁のなさに逆に運命感じます・・・。
いしいさんに不勉強をおわびすると、「ええよ~!俺、めっちゃお坊さんの雰囲気でてるやろ?!」と
寛大なお返事。かっこいいです・・・。
そんないしいさんは、ちびっ子と一緒にキャッキャ言って飛び跳ねているときがいちばん輝いていました。
そんな大人に、私もなりたい。
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>umi
おー、そうなの!いしいしんじさん読んでるんだね。
umiは文化的なこと何でもよく知っているね!さすがライターだね。
ぜひ、筆談しましょ。
私、無口だから筆談でないと饒舌になれないの。
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いしいしんじさん。
先月、ちょうど読んでました。「みずうみ」。
作品はたまに読むけれど、実はビジュアルを知らなくて…。
坊主だったとは。。。
お寺で坊主ときたら、そらお坊さんと間違えるよね。
見事なフェイントだね。
楽しそうでいいなぁ。
今度、私とも筆談してください。